Live Computing Inc.

BLOG

ブログ

 ホーム    ブログ    ゲームプロデュース    ウェブサービス化するゲーム
2020.06.24
ゲームプロデュース

ウェブサービス化するゲーム

ストリーミングゲーム 戦略の一手

クラウドやストリーミングで、ゲーム会社のビジネスモデルはどのように変わるのか。ソフトが一ヶ所に多数集まるApple Musicのようなモデルだけでなく、私はゲーム会社やブランド(IP)ごとに独立したウェブサービスが生まれる、と考えます。

ゲームメーカーのサブスクリプション・ビジネス

タイトルにもよりますが、ゲームはショップなどで流通するアイテムではなく、継続利用するサービスに近いところがあります。動画配信や音楽配信よりも、ヒントはITやネットサービスにあるように思うのです。

例えばMicrosoftやAdobeがソフトをまとめて定額配信する、サブスクリプションビジネス。新作・過去作をまとめて、全部買うよりもお得な定額で提供できれば、毎月継続して売上をあげるビジネスになります。

Adobe 料金体系

Creative Cloud 料金体系 (Adobe公式サイトより)

Adobeは5,6万円ほどするPhotoshopを月980円で提供するなど、ライトユーザーを積極的に開拓しています。見逃しがちですが、ゲームもハードウェアを買い、ソフトを買うハードルは相当に高い。ストリーミングで専用端末が不要になり、6000円するソフトを買わずにすむようになれば、ゲーム全体でも各IPでも、ユーザー層は大きく広がるはずです。

関連記事『実はテストマーケしていた Adobe サブスク導入戦略
関連記事『複数事業の重ね合わせ。 Adobeサブスク売上のからくり

IPにあわせた料金体系

料金体系も、ITやネットビジネスが参考になります。

所有タイトルがPCやコンソール主体なら、Microsoft 365のようにブラウザやスマホ限定の入門プランと、PCやゲーム機の標準プランに分けてもいい。手軽に遊びたい人を呼び込み、プレイヤー数を増やすと同時に収益を高めることができます。

上級者ほど高いフレームレート(FPS)が必要なシューティングやアクションゲームなら、法人向けクラウドサービスで見られるSLA(Service Level Agreement: サービス品質保証)も参考になります。初心者や一般ユーザーと切り分けて、追加料金をいただき高品質なネットワークサービスを提供する方法です。

競技性の高いIPであれば、上級者だけが参加できるリーグや競技力向上に役立つ機能を切り出して、プレミアムやオプションにしてもいい。

1回あたりのプレイが長く、毎日というより週末などプレイできる日数が絞られる傾向があるなら、World of Warcraft (WoW)のようにプレイ日数で課金するのも手です。(WoWは月額サブスクリプションもあります)。

World of Warcraft ゲームタイム

World of Warcraft ゲームタイム料金 (Blizzard Shopより)

ゲーム内容によって、複数のデバイスでプレイするメリットが高ければ、端末数で料金プランを変えてもいいでしょう。例えばAdobeは2台までという制約があります。

ダウンロード版の提供をやめてストリーミング配信のみとするなら、オフラインでも遊べる機能も重要です。Netflixのように無料で提供してもいいし、状況によってはプレミアムプランやオプションにしてもいいと思います。

セーブデータの数や容量で遊び方が変わるなら、Dropboxのようにセーブデータ数や容量で料金プランを変える方法もあります。Detroit: Become Humanのようにシナリオが分岐したり、ポケモンのように膨大な数のキャラクターを育てたりするゲームにマッチしそうです。Playstation PlusNintendo Switch Onlineでもセーブデータの保存は出来ますが、タイトル側で提供する方が付加価値の高いサービスを作れるはずです。POKEMON HOMEはそういう意味でも、とても興味深い先行事例です。

POKEMON HOME 料金体系

POKEMON HOME 料金体系(ポケモン公式サイトより)

ウェブAPIとゲームの広がり

ウェブサービスが面白くなるのは、APIを公開できるところです。

Youtubeは立ち上げ直後、ユーザーが自分のサイトに映像を埋め込めるようにしたことで、ユーザー数が伸びました(関連動画の紹介など他にも要因はあります)。

ゲームであれば、育てたキャラクターやマップ、建物、アイテムをSNSや自分のサイトに公開しても面白い。それらを他の人が利用できたり育てたり出来ると、ゲームそのものをプレイしなくても、友人や家族と楽しむことができます。ゲームの外に、遊びが広がる、というと言い過ぎでしょうか。

他社キャラクターが登場するコラボはよくありますが、APIを介して行うと、各プレイヤーが育てた値やカスタマイズした外観なども反映でき、違った体験になります。VRやARを使ったり、ライブ配信と組み合わせたり、今では想像できないようなサービスを生み出せるかもしれません。

ロイヤリティかプロモーションか

APIはビジネス上の課題もあります。一つはキャラの貸し出しなどを有料とするかどうか。キャラクター使用料として、これまでのようにお金をいただくことは可能です。Googleマップも一定頻度以上は有料です。

Google Maps API料金体系

Google Maps API料金体系(Google Maps Platform公式サイトより)

一方、ゲーム外にコンテンツの一部が広がることを、プロモーションとみることもできます。ゲームの一部を無料で試してもらい、最終的には自社の有料サービスに登録してもらう、という戦略も取れます。

APIはパワーバランスに要注意

もう一つの課題は、競合とのパワーバランスです。もし競合と判断すれば、GoogleはGoogleマップのAPIをその企業に限り止めることが、理論上は可能だからです。Appleが地図サービスを立ち上げたように、依存し過ぎるよりは自社で作ろうとする状況はありえます。

逆に言うとAPIを公開する企業は、提供範囲も相手も選べる。極めて有利な状況に立てます。他社がこぞって利用するAPIに育てば、いろいろな企業に対するパワーバランスも変化するはずです。

ゲームビジネスの収益構造を安定化

すべてのゲームパブリッシャー、デベロッパーがウェブサービスへの道を進むことはないでしょう。タイトルによっては、アイテムとして扱う方が向いている場合があります。

しかし、小規模なネットサービスが多数あるように、ゲームも巨大IPがなくても固定ファンに直接ソフトを配信し、継続的な収入をあげることは十分可能。月300円で遊べるサービスに10万人が集まれば、年商3.6億円のビジネスです。

ゲームは作ってみないと面白いかどうかが事前にはわからない、不確定要素の強いビジネスです。IPをアニメや映画、グッズに展開しても、ロイヤリティ収入は限られます。

世界観やキャラクターを活かしたサービスを直接お客さんに提供する。継続的な収益基盤を作った上で、ゲームを作る。そんなビジネスモデルが多く出て欲しい、と願っています。

関連記事