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2019.04.02
ゲームプロデュース

Apple Arcadeの課題

エンタテインメントにおいて月額制やサブスクリプションというと、Netflixなどの動画配信やApple Musicなどの音楽配信を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。これらは過去の名作が豊富に揃い、新作もオリジナル作品もどんどん追加されます。

しかしAppleが2019年3月に発表した月額定額型のApple Arcadeは、技術面での制約もあり人気ゲームが遊べず、過去の名作を揃えることもできません。また大型のオリジナルタイトルもないため、ファンやゲーム業界へのインパクトは現時点では大きくありません。以下その理由を整理します。

Apple Arcadeでファミコンやプレステゲームは遊べない

まずApple ArcadeのゲームはMacにも対応するものの、基本はタッチパネルで遊ぶゲームに限られそうだ、という点が挙げられます。

Netflixであれば過去の名作映画もすぐコンテンツに加えることができるのですが、Apple ArcadeはファミコンやPlaystationの名作をそのまま持ってきてもプレイすることができません。これはコントローラーに適したゲームを、タッチパネル向けに遊べるようにするには改修が必要なためです。

ソニーや任天堂はアップルとは競合したり、協力しあったりと複雑な関係があります。仮にビジネス上の合意ができたとしても、ファミコンやPlaystationゲームを遊べるようにするには、かなりの開発費がかかってしまいます。

逆に言うとコントローラーで操作するゲームを扱うPlaystationや任天堂スイッチ、先日発表されたGoogleのSTADIAは、Apple Arcadeとは扱うゲームが違うので、共存していくはずです。

ガチャがあるゲームもApple Arcadeでは遊べない

Apple Arcadeはインターネットがないオフライン環境でも遊べるとアピールしています。ということは、オンライン前提のゲーム、例えば日本で売上を大きく稼ぐ、ガチャがあるタイプのゲーム、例えばパズドラもモンストも、Apple Arcadeでは遊べません。

現実問題として、これらのゲームは実際に移行しようとしても、あまりにも通信に依存しすぎていて、別ゲームと言えるほどの改修が必要です。またAppleも大金を落とすこれらのゲームの売上を抑えることはありません。

今後もガチャがあるタイプのゲームはApple Arcadeとは切り離された今の仕組みでプレイする流れが続きそうです。

オンラインマルチプレイもApple Arcadeでは楽しめない

インターネットがないところでも遊べるということは、Fortnite荒野行動のような、多人数で同時に遊ぶゲームもApple Arcadeのタイトルには含まれません。

荒野行動 App Storeスクリーンショットより

もちろん、Pokemon Goもプレイすることができません。Apple Arcadeはいま主流を占めるゲームのほとんどが遊べない仕組みなのです。

売上上位を占めるゲームは、Apple Arcadeで遊べない

まとめるとApple Arcadeとは、購入時のみに支払いが発生する売り切り型のゲームを、月額サブスクリプションで提供するサービス、と言うことができます。

いまアプリ売上の上位を占めるのは、無料で遊べてアイテム課金をしていくゲームです。しかしこれらのタイトルほぼすべてが、Apple Arcadeには含まれません。むしろ現在の売上ランキングには入らないけれど品質の良いゲームが、遊び放題になる、とAppleは言いたげですが、インパクトに欠けるというのが正直なところです。

そこで今後、Apple Arcadeが成功するにはどのような点が課題になるかを整理してみます。

過去の良作アプリをApple Arcadeにどれだけ加えられるか。

ゲームパブリッシャーがタイトルをApple Arcadeに提供しても良い、と思えるほどユーザーが集まる状況ができれば、潮目は変わるはずです。

実は有料アプリにも長くランキングの上位にいたり、家庭用ゲームファンもわかるタイトルがあります。マインクラフトは常に有料Appの上位にいますし、海外であればNBA2K18やAssassin’s Creed Identity、国内であればドラクエやモンハンの移植タイトルなどもあります。

2019年3月下旬の有料アプリ国内ランキング。これらがApple Arcadeタイトル候補となる

これらのゲームはすでにタッチパネル向けに開発されているので、通信要素を調整すればApple Arcadeに移行できなくはないものです。今後これらのタイトルが加わってくれば、もう少しインパクトを出せるはずです。

本音を言えば、マリオランをApple Arcadeに持って来ることが出来たらインパクトは出せます。

しかしゲーム定額サービスを始めてしまったことで、任天堂との協業は一段と難しくなったと言わざるを得ません。このあたりにもAppleのゲームビジネスにおける立ち位置の難しさがあります。

オリジナルの大型ゲームタイトルを用意できるか

Netflixの『ハウス・オブ・カード』やHuluの『ハンドメイズ・テイル』など動画配信各社は独自コンテンツの制作にかなり力をいれています。Amazonは日本オリジナルコンテンツを何本も制作していますし、Apple自身も映像配信サービスApple TV+の発表では独自コンテンツのアピールにほとんどの時間を割きました。

もし、AppleがApple Arcadeに向けて積極的に投資してオリジナルの大型ゲームタイトルを出し始めれば、ゲームプレイヤーの注目を集めるに違いありません。そしてそのうち何本かが成功すれば、AppleArcadeはゲーム業界にも少なくない影響を及ぼす可能性があります。

著名ゲームクリエーターが集まるものの、オリジナル大作と呼べるものがない。

ただし現実的には、AppleはユニークなソフトをApple Arcadeに揃えたいとは考えるものの、開発者が制作リスクを負う今のビジネスモデルを変える覚悟があるようには、みえません。

無名のゲーム開発者がApple Arcadeで大金を稼ぐ、といった成功例がでないと制作者側も積極的にApple Arcadeに向けてソフトを開発するという機運はでないように思います。

どれだけタイトルが揃えられるか、がポイントになる。

オリジナルであれ過去作であれ、どれだけ遊べるタイトルが揃えられるかがApple Arcade成功のポイントです。

過去作であれオリジナル新作であれ、現時点ではプレイヤーも開発者も熱くなるようなインパクトには今ひとつ欠ける。この予想がよい意味で覆ってほしいのですが、サービス開始までもう少し、状況をみたいと思います。

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