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2017.12.05
ゲームプロデュース

スポーツゲームのデザイン:複雑な要素を一つずつ味わう

囲碁を習っていた頃、ある先生に「一気に学んでも栄養過多になるだけ。一つずつ消化していこう」と教わったことがあります。

ゲームソフトが得意なことの一つに、複雑な物事をそれぞれの要素に分解しわかりやすく提示する、というものがあります。

論理的に構成された本でも物事を順を追って知ることはできるのですが、ソフトウェアがよいのは、それらの要素を一つずつ受け手であるプレイヤー自身が試せるところ。スポーツゲームを題材に、その流れをご紹介します。

最初は、ひとつの要素に焦点を絞る。

たとえば、野球を題材にしたゲームを投手でプレイする場合、最初の要素は「ストレートを投げる」ことただ一つに絞り、バッターと対戦をしていきます。

最初はストレート以外の球種も、球速の緩急も、コースの投げ分けも、ありません。もっともシンプル化した行為を行い、その結果を受けることを何度か繰り返すことで、これは何をするソフトなのか、が一目瞭然になります。

何をするゲームなのかが、一目瞭然であること。
相手を打ち取る、という達成感を得ること。
もう少しいろいろ試したいと、意欲がわくこと。

この段階で、この三つをクリアすることが大事です。

細かくわけた要素を、ひとつずつ足していく。

その上で少しずつ要素を足していきます。次の大きな要素は「変化球を投げる」ことですが、その前に細かく段階を作るのです。例えばストレートだけでも「上中下に投げ分ける」ことを次に取り上げるとします。

すると、「上中下の3つの高さでどのような攻め方ができるか」「バッターは高低差にどんな反応をしてくるか」といった戦略性や楽しみ方が表に出てきます。ここで一気に変化球を投げれるようにしてしまうと、この小さいとはいえ大事な要素の遊び方や魅力が、伝わらないのです。

上中下にストレートを投げ分ける。たったこれだけのことしかできない状態で、「ランナーがいない場合」、「ランナーが1塁にいる場合」、「満塁の場合」など複数のシチュエーションを用意してあげると、シチュエーションごとに投げ方を変えた方が良い、という事実に気づくこともできます。

また、シンプルすぎる状況がかえって他の要素への渇望を生み出し、次に進む意欲を高めることも可能にします。野球が好きな方であれば、どんなときに左右や変化球など違う攻め方をしたくなるか、と考えるでしょうから、先に進みたいという動機にもつながるわけです。

Wikipedia”ストライクゾーン”より

ここまで来たら、「左右と真ん中に投げ分ける」要素を導入します。この段階で、上中下と組み合わせると9箇所に投げ分けることができ、ストレートしか投げられないとはいえ、それなりに戦略性ある遊びになります。

また、システマチックではあるものの先ほどと同じ「ランナーがいない場合」、「ランナーが1塁にいる場合」、「満塁の場合」でプレイすると、できることが増える分、「左右と真ん中に投げ分ける」ことの戦略性や楽しさをさらに引き立てることができます。

ソフトウェアで複雑なものを理解する

この構造そのものはプレイする側に伝える必要はありません。序盤はテキストを交えた解説やチュートリアルがあると丁寧ですが、それ以降はステージの構成や得られる能力や武器、戦う相手の特性といった部分で、段階を作っていけばよいのです。

このように考えていくと、改めてソフトウェアとは、物事を学ぶという行為と相性がよいのだなと感じます。

作り手は、素材の分け方と出す順番や見せ方に最大限の工夫を。

ただし。作る側としてはこのような積み上げ式の考え方でソフトウェアを組み立ててはいけません。「いくらでも難しくできる」と話すゲーム制作者もいらっしゃるのですが、本来はすべての要素を揃えた状況でどのような遊び方ができるのか、最終的な姿から逆算して、プレイヤーに一つ一つ提供しないといけないのです。

このあたりが、ソフトウェアを作る面白さでもあります。

一つ一つの小さな要素を取り上げて、どの順番でどのように使えばその魅力を最大限に活かせるか。よい素材を最大限に引き出したいと考える料理人のような気持ちで、ソフトウェアを設計し、制作したいと考えています。

 

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