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2019.08.01
サブスクリプション戦略論

Adobe サブスク導入戦略

female designer with mac

9万円のソフトが月2480円に。デザイナーの必須ソフト、イラストレーターやフォトショップはいま、月額で使えます。

開発するAdobeはサブスクリプションの成功例とされますが、ここに到るまでリストラや、売上の減少、顧客の批判に直面。当時の状況と戦略を、振り返ります。

リストラとFlashの敗北

2011年のAdobeは、長年主力製品の販売数が伸びない状況にありました。11月には750人のレイオフを発表同時にスティーブ・ジョブズから批判されたFlashも開発停止しウェブサイトのアニメーションや音楽再生の分野で敗北します。

この時期、Adobeは明るい雰囲気ではなかったはずです。
アップル社の公開レター(英文):Thoughts on Flash

2011年11月、サブスクリプションの料金プランを発表

そんな中、Adobeは主力製品を定額で利用できるサブスクリプションサービスを発表します。
ADOBE 2011 FINANCIAL ANALYST MEETING

月49ドルから月69ドルでフォトショップ含む全ソフトの最新版を提供。複数のパソコンでファイルが同期でき、質問できるコミュニティ機能を打ち出しました。Creative Cloudと呼ばれるこのサービス開始当初のプロモーションビデオをご紹介します。

半年前からサブスクリプションを試していた

実は発表の半年前から、Adobeはサブスクリプションを試していました。2011年4月に発売したCREATIVE SUITE 5.5で、旧来のパッケージ販売と並行し月29ドルからフォトショップを利用できるなど、月額定額制を導入していたのです。(Creative SuiteはAdobe主力ソフトが1つになったもの。ワードやエクセルが入った、Microsoftのオフィスと似たイメージです。)

このトライアル結果を、Adobeは戦略発表の場で紹介します。

1つは、定額ユーザーの38%がAdobe製品を初めて使ったこと。正直この比率は、高いか低いかは判断ができません。既存ユーザーはパッケージを買っているからです。大事なのは実際のユーザー数。公表しませんでしたが、Adobeは新規ユーザー数を見て、サブスクリプションに好感触を得た可能性はあります。

adobe analystMtg 2011 pricing

もう1つは、76%のユーザーがサブスクリプションでなければバージョンアップしなかった、と答えたこと。パッケージ版は古いバージョンを使い続ける人が多く、サブスクリプションはバージョンアップを促すことを言いたかったのでしょう。

料金プランは専門家から批判

発表した料金プランAdobeはフォトショップの利用者団体やブログなどで、批判を多く受けました。

背景には、アップグレード割引の条件変更があります。この年、Adobeはルールを変更。5,6年前に買っても割安だったのが、ここ2年くらいに買ったバージョンでないと、割引が受けられなくなりました。

おそらくAdobeはアップグレードのハードルを上げ、サブスクリプションへの移行を加速させたかったのでしょう。ただルールは変えなくても、高額なソフトを古いまま長年使っているユーザーもいずれ定額に移行した可能性はあります。

2012年4月 Creative Cloudサービス開始

ユーザーの批判とは逆に、サブスクリプションへの移行は株主には評価されました。2012年4月サービスを開始、半年後の決算では、12万6千アカウント。翌年は143万アカウントと順調に会員数が伸びます。

2013年5月 パッケージ開発停止

サービス開始から1年後、Adobeはパッケージ商品の開発を停止。サブスクリプションに完全移行することを発表します。
出典:Adobe Accelerates Shift to the Cloud

これもユーザーから批判されました。

しかし、サブスクリプションは移行するなら中途半端にしないほうがいい。両方を並行すると、社内リソースは分散し、ユーザーも選択肢が増え混乱します。結果からみても、Adobeはフォーカスしてよかったと言えます。

Adobe 5年で売上倍増

サービス開始の翌年、Adobeの売上は9%近く下がります。しかし2年後に回復、5年後に倍増します。

Adobe売上 2009-2018
出典:Adobe Financial Documents

この急上昇には、デザイナー向けソフト以外の事業拡大など、カラクリがあります。これは別記事でご紹介します。

強い立場だからこそ成功、Adobeのサブスクリプション戦略

毎月2480円でも、3年間払うと9万円。3年以上使うと、損をします。

アドビ社はすべてのソフトを使えるプランを5680円で用意したり、最新機能を早く提供したり、コミュニティやストレージ機能を提供したりと、工夫をこらしています。

これらは成功の一要因です。

ただ現実にはイラストレータやフォトショップは業界標準であり、取引先が利用していれば切り替えはできません。操作に慣れた人は他社製品に切り替えるハードルも高い。結局のところ、顧客がAdobeの価格や提供形態に合わせざるを得なかったことが、サブスクリプション成功の大きな要因と言えそうです。

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