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2020.09.24
デジタルビジネス事例集

サブスクは様子見 自社ワインで急成長するWinc.inc

ワインサブスクリプション Wincの紹介

ミュスカデという白ワインが私は好きで、他にも好みにあうワインを知りたい。けど、お店で探せるほどの知識が、残念ながらありません。

日本のワイン頒布会やサブスクリプションは、どのお客さんにもプロが選んだ同じワインが届きます。けれど他人がいいと言っても自分にあわないモノって、たくさんありませんか。

アメリカにもワイン頒布会はあるのですが、人工知能を使い個別にワインを勧めてくれるサービスがいくつかあります。

クイズ形式で好みを聞く

ワイン販売Wincのサイトは、まずクイズを出題します。コーヒーの好み(ブラック、砂糖入りなど)、塩やシトラス、ワインの赤白の好みを答え、その場でワインを勧めてくれる。届いたワインを評価すると、提案の精度はさらに上がるといいます。

ワインサブスクリプション クイズによるレコメンデーション

創業者は、お客さんをコンフォートゾーンから引き出したい、と言います。この尖ったところが、人気がある理由の一つかもしれません。
FORBES『Why Winc Isn’t Your Average Modern Wine Club

ただし、好みを把握するといっても、何が届くかわからない月額定額サービスではありません。あくまで買うときのオススメに留まります。控えめレコメンド機能を使っているとも言えるし、お勧めできる内容や品揃えに自信がないとも言えます。

自社製造とレコメンドの矛盾

Wincは2015年からワイン製造を始め、転機を迎えます。お客さんの嗜好データを活かしたワインを提携先ワイナリーと一緒に作り、自社サイトで売る。かつ、他の小売店に卸す。4年間で売上は333%伸びています。

しかし、自社製造とレコメンドサービスは戦略的に相容れないところがあります。お客さんに合ったモノをお勧めるといいながらも、自社ワインがあると、それを優先的に勧めたくなるのが、必然だからです。

Netflixの戦略も同じです。DisneyやHBOがNetflixから作品を引き上げるのを見越して、オリジナル作品を量産している。けれどその結果、勧められるのは好みにあったものというより、Netflixが観て欲しい作品が多い。セレクションそのものが豊富ではなくなり、好みにあったドラマや映画を見れるサービスではなくなりつつあります。

クールジャパン出資も、日本酒は??

不思議なことに、Wincにはクールジャパン機構が2019年7月に$10M(約11億円)出資しています。クールジャパン側の狙いとしては、日本酒の共同開発や会員向けに日本酒の情報発信を強化する、とあります。しかし2020年9月現在、サイト上でSake(日本酒)という言葉は見当たりません。
クールジャパン機構『米国での日本酒流通拡大を目的としたワインのサブスクリプション事業へ出資

もっとわかりやすいのは、経営者自身のブログです。以下2020年3月の記事を見ると、クールジャパンの出資で取り組んだのは、「自社ワインの卸売販売」「ブランド強化」「経営陣強化」の3つ。現時点で日本酒への取り組みは、見えてきません。

In 2019, Winc was able to heavily invest in its future. With a $10MM investment from Cool Japan Fund, we secured the infrastructure necessary to act upon our acquisition strategy. That strategy included a heavy investment focus on: 

1) Our wholesale team – a division that has continued to grow healthily each year 

2) Our brand team  – scaling our portfolio of brands in both DtC and the wholesale channel

3) Our core leadership team – a team that has the experience to execute on our acquisition strategy and set us up for future acquisitions. 

Winc Shares: 2019 Financials and 2020 Plans

ワインをAIで化学分析するFirstleafとの違い

日本酒の魅力を多くのアメリカ人に伝えたいなら、私なら競合のFirstleafを選びます。彼らは化学物質の組み合わせで、「ワイン」と「飲む人の好み」を分析・提案する。同じアプローチが、日本酒にも応用できるからです。
参考記事『他人の好みは関係なし。自分だけの好みを人工知能で分析する、ワインサブスクFirstleaf

Winc創業者のBrian Smithさんは、ソムリエがワインを勧めるのと同じことをやっている、と言います。しかし、私から見るWincは、テクノロジーを活かしてアルコール飲料を幅広く手掛ける会社ではない。

Wincの本当の強みは、魅力的なワインを作る力と、それを卸に売り切る力。AIやレコメンド、といったキーワードを使うのは、投資家へのリップサービスにも思えます。

会員数54万人のWincは、2020年3月に前月比で111%発注が増え、新しいメンバーが4万2000人増えるなど、コロナ禍が追い風になっています(無料で会員になれるので、会員数=有料サブスク会員数ではない点に注意)。
Modern Retail『Winc co-founder Brian Smith on wine delivery surge: ‘We’ve been betting on it for a long time’

Winc投資家向けプレゼンテーション『Winc Shares – Your Chance to Invest in Winc』

 

自社ワインを抱えながら、今後、レコメンデーションAIがどのように進化するのか。日本酒やビールへは作り手として進出するのか、レコメンドサービスとして手掛けるのか。同じビジネスモデルでアメリカ国外に進出するのか。Wincの今後に注目したいと思います。

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