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スポーツがコンピューターゲームと相性がよい理由のひとつに「ルールが明確であること」があります。テニスであれば、ボールが飛んできたら、ネットに引っ掛けずに相手コートにボールを打ち返さなければならない、と瞬時にわかる。
ファミコンが登場するはるか前、初めて制作されたコンピューターゲームの一つとされるのは、Tennis For Twoと呼ばれるテニスゲームでした。
このような、スポーツを題材にしたゲームは今や、ビッグビジネス。毎年更新を重ねたソフトが世界中でプレイされ、ゲーム専用の大会(eスポーツ)も開催されるまでになりました。
実在するスポーツ選手を自分が操作し、憧れのフィールドで自分が決めたゴールにスタジアムのボルテージが一気に上がる。ゲームならではの楽しさです。
ただ、コンピューターゲームとスポーツの組み合わせ方には、もっと広がりがあるのではないか、とも思います。
いま、私自身が注目しているのはAR(拡張現実)技術を使ったゲームです。代表例であるPokemon Goは実際の場所とキャラクターを重ねてスマートフォンで遊びますが、この考え方を、スポーツ施設で展開できないかと考えています。
例えばクライミングウォールとプロジェクションマッピングを融合したAugmented Climbing Wallと呼ばれる仕組みがあります。
Augmented Climbing Wallは、クライミングする壁(ウォール)に映像を表示し、進むべきルートを示してあげたり、通過できるエリアを狭めて通常のクライミングとは違う制約を設けたりします。『一つの設備で初心者も上級者も楽しめる遊びが作れる』点に可能性を感じます。
このような仕組みは様々な室内競技に応用できます。プロジェクションマッピングの仕組みとスピーカー、プレイヤーやボールの動きを検知するセンサーを配置すれば展開が可能なので、投資は要りますが新たな施設を建設する必要はありません。
もう一つ可能性を感じるのは、『競技ルールと異なるスポーツの楽しみ方』を提案できる点です。例えばコートやフィールドに共通の敵を表示し一緒に倒していく、モンスターハンターやモンスターストライクのような遊び方です。
対戦型のスポーツ競技に協力プレイを持ち込む、という考え方は長年その競技を楽しんでこられた方には受け入れがたいかもしれません。
しかし、スポーツを技術や体力が異なる相手と楽しむには、対戦だけではない方法が必要です。上級者の方がプレイ経験のない友達や恋人を誘って一緒にプレイしたり、身体能力の異なる親と子どもで一緒に競技を楽しむなど、ゲームの力でスポーツの楽しみ方を広げることが、技術的には可能になりつつあります。
私は十年以上ゲーム業界で仕事をしながら、SuicaなどのICカード、位置情報、音声認識、画像認識などの技術の進化を見てきました。何度かこれらの技術をゲームに組み込んでお客さんに遊んでいただきました。いち早く技術を採用したものの、技術や環境含めたタイミングが合ってなかったと反省する事例もありました。
今年、2017年はスマートフォンの基本機能にARが採用されました。VR専用の施設や、プロジェクションマッピングを使ったエンタテインメント事例が増えてきたなか、スポーツの分野においてもこれらの技術を使う場面が増えてきそうです。その流れのなかで、身体を動かすスポーツとコンピューターゲームをうまく組み合わせ、スポーツの楽しさを広げていきたい。そのように考えています。