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NetflixはDVD郵送レンタル開始当初、解約率が10%でした。その後4%を切るまで改善方法や、他業種のサブスクリプションビジネスに参考になる点(ならない点も)をご紹介します。
1997年Netflixは、まだほとんど流通していなかったDVDの郵送レンタルで創業。最初は単品で借りる仕組みでしたが、返却期限なしの月額定額制(サブスクリプション)に移行し、一気に成長します。
標準プランは、DVD3枚を19.95ドルで郵送してくれ、送料や返却期限はなし。返却すれば同じ月に何枚でもDVDを借りることができます。
参考記事:『Netflix 郵送DVD会員数の推移』
Netflixは上場した当時、4つの重要指標を挙げています。
Subscriber Churn: 解約率
Subscriber Acquisition Cost::顧客獲得コスト(CAC:Customer Acquisition Costとも)
Disc Usage Per Paying Subscriber:有料顧客あたりDVD発送数
Gross Margin:粗利益
なかでも「顧客あたりDVD発送数」は、レンタル回数が人によってバラバラで、配送コストや映画製作会社とのレベニューシェアが変動し、粗利益に影響します。
ただし、多く借りることが悪いわけではありません。借りる回数が上がるのは顧客満足度が上がっている証であり、解約率や顧客獲得コスト(口コミによる)が下がりします。「顧客あたりDVD発送数」は下げるのではなく上げるのが目標で、他の費用と合わせて目標利益を達成する、という考え方をしています。
2011まで公表されていた、郵送DVDレンタル事業の解約率がこちらです。
Netflixの解約率は2002年の6%から順調に下がっていますが、Netflixの元CFOによると、サービス開始当初は毎月10%が解約していたようです。
At Netflix, the metric we used to evaluate overall product quality was monthly retention. This high-level product engagement metric improved significantly over twenty years. In the early days, about 10% of members canceled each month. In 2005 the monthly cancel rate was around 4.5%. Today, it’s close to 2%.
出典:Medium.com #4 Proxy Metrics
サブスクリプション・ビジネスを立ち上げるとき、お客さんの何%が解約するかは、事業計画に大きく影響するため、気になるところ。ですが一般的な指標は、残念ながらありません。
法人サービスや消費者向けでもセキュリティ、日常的に使うサービスは低い。逆にエンタテインメントではもっと高く、Netflixの4%は極めて優秀です。
気をつけるべきは、解約率というものが、時間をかけるほど下がる傾向にある点です。というのも、会員が順調に増えると、解約しやすい新会員が占める割合が下がり、自然と解約率は下がるからです。なので、似たビジネスでも、長く続くサービスと立ち上げ直後のサービスでは、解約率に開きがあっても、焦ることはありません。
もう一つ注意いただきたいのは、Netflixは月額のみで年単位の契約ではない点。娯楽商品なので、一時的に解約する人も(計測期間によっては)解約率に含まれてしまいます。私自身、しばらく忙しくて観れそうにないとき、動画配信のサブスクは止め、時間ができたら再開しています。
解約率はサービス品質を測る重要な指標ではありますが、日常業務でむしろ大事なのは、解約につながる問題箇所を見つけ出すことです。
Netflixは、1対1や小グループでヒアリングしたり、1週間Netflixで何をしたかを記録してもらったり、初日と最初の1週間の行動データを分析したりと、新規登録者に絞って原因を探ります。その結果、DVDリストを作るところがわからず、作品を1つも追加しないお客さんが多かった。観たい作品のリストを作らないと、登録しても何も送られてきません。
そこでNetflixは、改善指標を作ります。それは『最初のセッションで3つ以上作品を登録する人の割合』。会員登録やDVD登録のステップを減らし、余計な情報も減らし、サービスをわかりやすくした。当初70%だったこの指標が1年で90%まで改善したそうです。
Netflixは当たり前のことを当たり前にやっている。けれど、徹底できるから、強い。
作っている社員同士や慣れているお客さんだと通じることも、初めてのお客さんにはわからないことって、実は多くあります。
もし解約率が下がらない、とお悩みでしたら、新しいユーザーがどこで躓いて、どこに不満を感じるのか、アクセスデータをみたり、ヒアリングしたり、モニタリングしたりしながら、問題を特定してください。そしてそれが改善したとわかる、数値目標を設定してください。
これを繰り返せば、解約率はかならず、下がります。
Netflix 『Annual Reports & Proxies』
Medium.com Netflix 元CFO Gibson Biddle氏 『#4 Proxy Metrics』