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2018年のIPO以来、Spotifyは有料のプレミアム会員数を公表しています。最新は2020年9月時点の1億4千400万人。無料会員数や客単価と合わせてご紹介します。
Spotifyには広告ありの無料会員と、広告なし有料のプレミアム会員があります。プレミアム会員は2016年末に4800万人でしたが、2019年末には1億2400万人と、3年で2.5倍に成長しています。
ただし厳密には、プレミアム会員=有料会員ではありません。Spotifyは決済登録者をプレミアム会員とするので、無料トライアルも含まれます。さらに6人まで入れるファミリープランも一人ひとり会員数にカウントされます。
2019年に増えた2800万人のプレミアム会員のうち、無料トライアルが644万人、ファミリープランが924万人と、合計すると半数を超えます。課金ユーザーは1200万人しか増えていない、と見ることもできます。
Our Family Plan contributed 33% of total gross added Premium Subscribers during 2019. Further, our free trial offers and global campaigns contributed 23% and 10% of gross added Premium Subscribers during 2019, respectively
Spotifyの月間アクティブユーザー数(MAU:Monthly Active User)をみると、2019年末で2億7100万人。3年間で2倍に増えています。
このうち、無料会員は56%。言い換えると、課金ユーザーが44%を占めます。
課金者が1割にみたないサービスもあるなか、この割合は高い。無料プランはダウンロードできなかったり、スキップできなかったりと不便ではあるので、Spotifyが気に入ったらさっと課金してしまうのかもしれません。
Spotifyはプレミアム会員と無料会員をわけて決算報告するので、両者の粗利益率をみます。
プレミアム会員はサブスクリプション事業。一方、無料会員は広告ビジネスです。
原価には、楽曲ロイヤリティや配信コスト、決済コストを含みますが、ロイヤリティは同じ楽曲でも広告とサブスクで条件が違う場合があるようです。広告配信のシステム費用や広告営業の人件費などが含まれているかは、わかりません。
ここ3年の成長はどうでしょう。毎年獲得した新しい会員を比べると、無料会員は伸びていますが、有料会員は横ばいなのがわかります。
音楽配信ビジネスとしてみると、Spotifyの最大の敵はYouTube Music。
音楽は、1つの曲に録音やライブだけでなく、アレンジやカバー、カラオケが無数にあります。映像も、公式ミュージックビデオに加え、使用されているドラマのシーンから、ライブパフォーマンスまで幅広い。けれどSpotifyは、ライブパフォーマンスや映像といった音楽がもつ広がりを捉え切れていません。
YouTube Musicは、公式・素人問わず音も映像もたくさんあり、広告ビジネスのインフラ・営業体制も世界一。暴力的なほど資金があるGoogle相手に、勝つのは大変です。
私なら、YouTube Musicとは勝負は避ける戦略をとります。
Spotifyは自分たちを音楽配信ではなく、音楽とエンタテインメントを見つけられる「発見ビジネス」だ、と言います。
Spotify is more than an audio streaming service. We are in the discovery business. Every day, fans from around the world trust our brand to guide them to music and entertainment that they would never have discovered on their own. If discovery drives delight, and delight drives engagement, and engagement drives discovery, we believe Spotify wins and so do our users. Our brand reflects culture—and occasionally creates it—by turning vast and intriguing listening data into compelling stories that remind people of the role music plays in their lives and encourages new fans to join Spotify each week.
「音楽」で勝負するなら、映像に圧倒的に強いYouTubeには勝てません。けれど、目ではなく耳に特化した、映像のない「音声」も十分な市場がある。さらに言えば、映画・ドラマやスポーツに特化した映像配信があるように、「音声」にも複数の企業に参入余地があります。
すでにポッドキャストでよくある「ニュース」や「ラジオドラマ」だけではありません。スマートスピーカーは話しかけられるので、「料理」「学習」「ヘルスケア」など、インタラクティブなサービスは、未開拓なままです。
あるいは、YouTubeが個人制作映像の溜まり場になったように、Spotifyは個人制作「音声」のプラットフォームになってもいい。歌唱や演奏、朗読、コメンタリーなど、映像は苦手でも音声に才能を発揮する人は、世界中に無数にいるはずです。こういった人たちが稼げるプラットフォームを作るなら、Spotifyはかなりいい位置にいるのではないか。3億人近いアクティブユーザーがいて、広告ビジネスもある。
YouTubeはすでにオーディオ広告をはじめています。音楽で勝負するにせよ、音声で勝負するにせよ、Spotifyに残された時間は多くはありません。
Spotify Investor Relations Financials
Google Ads & Commerce Blog “Audio ads on YouTube expand reach and grow brand awareness”
9to5Mac “Spotify subscribers pull further ahead of Apple Music, but on loss-making deals”