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創業2年で3500社、5年で1万社を超えたSalesforceのサービス開始10年の顧客とユーザー数の推移を見ていきます。
Salesforceは2004年6月上場ですが、アニュアルレポートでは2002年1月末までさかのぼって、業績を開示しています。
出典:Salesforce Financial Reports
2002年1月はサービス開始からほぼ2年。この時点で3500社の顧客を獲得しています。2001年当時はITバブル崩壊やアメリカ同時多発テロがありました。当時としては斬新なクラウドCRMソフトでもあり、よいスタートを切ったと言えそうです。
2005年には1万社を突破、2011年には9万社を超えたSalesforceですが、2011年以降、顧客社数もユーザー数も公表していません。
Salesforceは企業ごとに利用ユーザー数で料金が変わります。ユーザー数も開始2年で5万、4年で10万、8年で100万ユーザーを超えています。2010年以降、ユーザー数は公表されていません。
出典:Salesforce Financial Reports
顧客1社あたりのユーザー数はどうか。2002年は1社15ユーザーだったのが、その後2009年には27ユーザーまで増えています。
出典:Salesforce Financial Reports
2008年には過去最大の6万ユーザーを持つ顧客を獲得。当時のアニュアルレポートによると、1万ユーザー以上いる顧客が7社、1000ユーザー以上の顧客が86社いるとされ、導入規模が拡大していることがよくわかります。
1社あたりユーザー数が増えれば、1社あたりの売上高も当然あがります。創業10年間のクライアント1社平均売上高は、6,100ドルから16,900ドルへと急上昇。顧客の企業規模が上がっただけでなく、中小のお客さんもオプションやカスタマイズなど客単価があがっている可能性があります。
出典:Salesforce Financial Reports
ここは上がればよいというものでなく、小規模の客が増えれば下がってもビジネスは拡大しているし、解約率が上がれば顧客数が同じでも上がってしまう。
いずれにせよ、顧客数を公表しなくなったら、その様子を知ることはできません。むしろ公表しないという事実が、期待されるほどには顧客獲得できていない可能性を示しています。
Salesforceの顧客獲得は、インサイドセールスと呼ばれる電話と、対面(オンライン含む)の二段階営業です。実際どれくらいコストが掛かっているのか、1社あたりのマーケティングコストをグラフにしたのがこちらです。
出典:Salesforce Financial Reports
Salesforceは1社あたり7000ドル(約73万円)から9000ドル(約95万円)のコストをかけています。顧客数が急増していますが、下がることはなくむしろ上がっています。これは、顧客規模が大きくなっていることも影響しています。
ちなみに、1つ注意点がこのグラフにあります。それは営業費用が公表されるPLのSales and Marketing費用なので、既存顧客のサポート費用も含むところ。顧客獲得コスト(CAC:Customer acquisition cost)ではありません。
唯一無二の技術があるわけではなく、競合は増えていく。その前に出来るだけ、大手も中小企業も獲得したい。そのためにも、顧客獲得にかける費用は惜しまない。Salesforceの成長戦略はそんな風にもみえます。
Salesforceにとって、同じ土俵で戦うOracleやSAPよりも、となりのフィールドにいる相手が競争相手として手強い。Adobeはマーケティングオートメーションのマルケトを買収していますし、Microsoft OfficeやGoogle Workplaceのグループウェア、SlackやZoomのコミュニケーションソフトも、競合相手になり得る。
直近のSalesforceの地域別売上をみると、北米が7割。実はこの比率、創業直後の8割から大きく変わりません。このあたりに、新規事業やベンチャーのヒントがあるように思います。