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ゲームビジネスにおいて、サブスクリプションには複数タイプがあります。プラットフォームが提供するものから、タイトル単体で提供するものまで。他業種の事例もふまえて、整理してみます。
1つ目は、Apple Arcade、PlayStation Nowなど、定額でたくさんのゲームが遊べるタイプ。Apple Musicやエアークローゼットなど膨大な数のアイテムが定額利用できるビジネスモデルです。
お客さんから見ると、たくさんのソフトが遊び放題でお得感があります。調べて比較して買うという面倒から解放されますし、買うほどではない商品を試して気に入るといった、新たなアイテムへの出会いもあります。
ビジネスとしても、新作を手軽に試してもらえたり、旧作で稼げたりと、メリットがたくさんあります。しかしサービスを提供するには、旧ハードや他ハード含むタイトルの品揃え、アイテム課金ができないといったマネタイズの制約など、映画や音楽にはないゲーム固有の難しさがあります。
2つ目は、PlayStation PlusやNintendo Switch Onlineなど、オンラインプレイやセーブデータの預かりなどを提供するタイプ。ショッピングに付加サービスを提供するという意味で、Amazonプライムに似ています。
お客さんから見ると、オンラインプレイも特別割引も、とても魅力的です。PSプラスの月替わりのフリープレイ、Nintendo Switch Onlineの過去作の無料プレイに惹きつけられる人も多い。
ビジネスとしてみると、販売数に左右されない安定した収益をもたらしてくれます。しかしゲームビジネスで、この部分をプラットフォーム企業が独占してしまうと、ソフトメーカーの稼ぎどころが減ってしまい、利害が対立する部分もあります。というのも、オンラインプレイはゲームソフトそのものとも言え、それを課金とするかどうかの判断や、課金した場合の収益は、開発会社にも得る権利があるはずだからです。
3つ目は、Worldwarcraftやパズドラやモンストなどにみられる、ゲーム単体の定額サービスです。定額だけで遊べるものもあれば、アイテム課金と定額プランが一緒のものもあります。
お客さんからみると、アイテム課金せず定額でそれなりに遊べる安心感があったり、商品を購入するよりは安くゲームが始められたりします。
ビジネスとしてみると、商品発売時よりは売上が下がるものの安定して稼ぐことができる、売上が予測しやすい、といったメリットがあります。一方サブスクリプションだけだと、売上を大きく伸ばすにはユーザー数を増やすか、値上げするか、オプションやプレミアムプランを用意するか、といった選択肢しかありません。タイトルによっては基本無料+アイテム課金で得られる利益の方が大きい可能性があります。
4つ目は、3つ目と似ていますが、同じメーカーの違う作品や、同じIPでも過去作や派生タイトルが利用できるタイプ。エンタメではディズニープラス、Microsoft 365やAdobe Creative CloudなどのITサービス、ネスレの定期お届け便などのB2C商品でも見かけます。
お客さんからみると、お気に入りブランドの商品が定額で利用できるので、お得感もあるし、毎回購入する煩わしさも減ります。ただし、選択肢が多い商品カテゴリーだと、他社商品が選べない不便さがあります。音楽やファッション、お菓子やお酒など、たくさんのアイテムから選ぶのが楽しいジャンルには不向きなモデルです。
ビジネスとしてみると、これまで流通店経由でしか得られなかった利用動向がメーカーにもわかり、顧客に直接プロモーションが打てるようもなります。流通経由で購入するよりは安いので新しいユーザー層を開拓できますし、直接販売なので利益率が大幅に向上します。これらは3つ目のモデルにも共通する利点です。
ゲームにおいては、EA Playが先行事例になりそうです。Pokemon HOMEもIP単体で提供しているクラウドサービス、という意味で近いのですが、提供しているのはオプションサービスであり、ゲーム商品そのものではありません。
過去作や派生タイトルが多数あるIP、年間に多数のタイトルを出す大手パブリッシャーなど、ビジネスを成長させられるチャンスはありそうです。
ゲーム以外の業界の月額サービスを見ると、アイテム販売や施設予約など取引があるサービスと、モノやコンテンツをレンタルするサービスでは、サブスクリプションの中身が大きく違います。メーカーなのか、流通・販売なのか、業界における立ち位置でも、ビジネスモデルは大きく異なります。
ゲームビジネスは、映像や音楽のようなアイテムとして流通する側面と、ITのようなネットサービスの側面もあります。IPやタイトルの特性と、市場環境、自社の立ち位置によって、とるべきビジネスモデルは変わってきそうです。