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2023.01.24
ゲーム進化論

ゲーム業界地図

ゲーム業界地図 ライブコンピューティング

5年後10年後のヒット作はどこから生まれるのか?家庭用ゲーム機、スマートフォンに続く、新しいハードウェアが現れるでしょうか。あるいは、ハードウェアをまたぐタイトルが主流になるでしょうか。

未来は予測できないけれど、将来の兆しは見つけられる。そう考え、ゲームパブリッシャーを軸に7つに分類したゲーム業界地図を作りました。

これまでゲームはハードウェアが牽引してきました。処理能力やグラフィックの向上。リモコンやタッチパネルなどの新しいインタフェース。しかし今、Fortnite原神などコントローラーでもタッチパネルでも遊べるゲームが増えています。あらゆるゲームを実況し広告収益をあげるYoutuberがいます。

ハードウェア起点ではない、新しい遊びのヒット。
ハードウェアから離れたところでの、収益の増加。

そこで私たちは、ハードウェアではなくパブリッシャーを軸にゲーム業界を分類しました。新しい遊びを生み出す開発力。遊びを収益に結びつけるマーケティング力。アニメやグッズなど多彩なビジネスを生み出す著作権という資産。変化を起こす力はパブリッシャーにあるからです。

ゲーム業界の7分類

変化の兆しを捉えること。パブリッシャーとの関係を明確にすること。この2つを念頭に、ゲーム業界を7つに分類しました。

ゲーム業界地図 ライブコンピューティング

上にいくほど消費者に近くなります。ゲームをプレイする人だけでなく、実況を見る人やアニメ・グッズ・テーマパークを楽しむ人も含みます。

矢印は情報の流れです。おおむね消費者に向けて流れますが、ゲームそのものに影響を与えるものは双方向で表現しています。

ストア

まず、ゲームそのものを販売・配信する企業を「ストア」としました。国内に30社あります。

ストアは任天堂など家庭用ゲーム機メーカー、Googleなどアプリ配信会社、DeNAなどブラウザゲーム運営会社を含みます。自社ソフトのみダウンロード販売する企業は含みません。今回はデジタルストアに絞ったため、パッケージソフトの卸や小売店、ECサイトは対象外としています。

デジタルストアはApp Storeをはじめとする決済手数料の議論があります。しかしストアビジネスに影響するのはサブスクリプションの流れです。

サブスクリプションにはストア限定のものと、ストアをまたぐものがあります。どれが主流になるかは、わかりません。ただストアをまたぐサブスクリプションの勢いが増せば、ストアの位置付けは変わらざるをえない。ゲームサブスクリプションの進む方向を見るには、ストア企業の動きがヒントになります。

IPサービス

次に、ゲームのライセンスを受け、商品・サービスの提供やプロモーションをする企業を「IPサービス」と分類しました。アニメやグッズ、テーマパークだけでなく、ゲームキャラクターを使用する飲食チェーンや航空会社など多くのB2C企業を含みます。ただこれらをゲーム産業に含めると全体像がわかりづらいため、後述するゲーム関連企業数には加えていません。

パブリッシャーにとってIP展開は、収益源とプロモーションという二つの側面があります。ライセンス料を収受する場合もあれば、費用を支払ってでもブランドの露出を増やしたい場合もあるからです。

お客さんにとってIP商品は、プレイせずゲームの世界観が楽しめるもの。ゲームそのものにお金は払わないかもしれませんが、ゲーム産業の大切な分野です。

新分野

もうひとつ、ゲームプレイやIPサービスとは違った楽しみを届ける企業を「新分野」としました。ゲーム実況やeスポーツ、VR、ブロックチェーンなどを手がける企業です。他産業からの参入や新興企業も多く、全てを捉えられていない可能性はありますが、私たちの集計では国内に147社あります。

IPサービスと異なるのは、お客さんのゲームプレイに与える影響です。ゲーム実況は、観た人がプレイの参考にしたり実況者と一緒にプレイしたりと、ゲーム体験に変化を与えます。ブロックチェーンは、キャラクターやアイテムがゲームから離れ資産として戻ってくる。つまりIPサービスがゲームからの一方向なのに対し、新分野はどれもゲームと双方向なのです。

この双方向性が、この分野の鍵。IPサービスはグッズもテーマパークも専業の会社と組みます。しかしゲームプレイに影響を与えるなら、自社展開や買収も視野に入る。反対に、新分野で創業して自らゲームも作る企業も出てくるはずです。将来の大手パブリッシャーはここから生まれるかもしれません。

パブリッシャー

「ストア」「IPサービス」「新分野」にゲームを提供するのがパブリッシャーです。国内に437社あります。

家庭用ソフト、PCソフトやブラウザゲームのパブリッシャーは各ストアから集計しました。スマートフォンゲームは10万ダウンロード以上を目安としています。一方、企業HPで実績に挙げても権利表記にその企業が含まれない場合は除外しています。

パブリッシャーには著作権という資産に加え、ゲームの「世界観」と「あそび」を生み出す能力があります。巨大IT企業でもゲーム事業では成功できないことからもわかるように、この能力は貴重です。

新しいハードがきっかけを作ってくれるとは限りません。パブリッシャーとその予備軍のビジョンとタイミングを見極める力、そして実行力が問われています。

メディア・コミュニティ

ユーザーに情報を発信したり、ユーザー同士でやりとりする場を提供したりするのが「メディア・コミュニティ」です。国内には55社あります。

WEBや紙媒体だけでなく、イベント主催者や開発者向けB2B向けメディアも含みます。ただし自社だけの会員組織を持つ企業は、ここでは除外しています。

本来メディアとコミュニティは異なるものです。しかし複数のゲームを横断して扱う立ち位置にいるため、ここではひとつにまとめました。

自社で情報発信するオウンドメディア、自社SNSを活用したコミュニティの力は大きい。それでも中立だからこそ出来ることがあります。複数のゲームを横断したサービス、たとえばゲーム内の資産(アイテム)を交換または換金するブロックチェーンを利用した仕組みは、この分野から生まれるかもしれません。

ビジネス支援

消費者ではなくパブリッシャーと取引する企業は「ビジネス支援」と「ゲーム制作」に分類しました。

フィーを受け、パブリッシャーの集客や運営、戦略立案を支援する企業を「ビジネス支援」としました。558社が該当します。新分野とした動画配信やeスポーツ企業のうちパブリッシャーの集客を支援するところは、こちらにも分類しています。

収益をパブリッシャーにもたらす企業もあります。ゲーム内広告を配信する企業です。これらはどのゲームにも共通のフォーマットで広告を配信します。一方、自社サービスに最適化した広告の仕組みは、ゲームでは未開拓。Googleのようなネットワーク型ではなくTwitterやAmazonのような自社サービスに最適化した広告の仕組みです。

NetflixDisney+が広告プランを導入したことからも、自社サービス内に広告システムを築き上げる企業が出てくるかもしれません。ユーザーが創作したコンテンツを上位表示するなど、クリエイターエコノミーに「新しいあそび」と広告を組み合わせたビジネス。検討の価値はあります。

ゲーム制作

パブリッシャーから受託しゲーム全体やその一部を制作する企業は「ゲーム制作」としました。ゲーム専業の開発会社(ディベロッパー)や、デザイン・サウンド・シナリオ・翻訳・デバッグなど専門性をもちアニメなど他分野からも受託する企業があります。国内に2230社あります。

ゲーム開発ツールも含まれます。制作ツールやゲームエンジンだけでなく、対戦型AIやブロックチェーンの仕組みなどをパブリッシャーやディベロッパーに提供する企業です。

いくつかのツールは開発者だけでなく一般ユーザーにも提供されます。それらのツールが広まり、「新しい遊び」と組み合わされば、この分野からもパブリッシャーが生まれる可能性があります。

ゲーム業界の企業数

ゲーム業界の企業数は2,672社となりました。分野別ではゲーム制作が2,230社と最も多く、ストアが30社と最も少ない結果となりました。なお、複数の分野を手がける企業はそれぞれでカウントしています。任天堂はパブリッシャーとストア、UUUMは新分野とビジネス支援、といった具合です。したがって各分野の企業数合計は2,672社以上になります。

ゲーム業界企業数_20220301

設立年別で企業数をみると、PS2が出た2000年、Wii・DSLiteとモバゲーが出た2006年、パズドラのヒットを受けた2014の伸びが目立ちます。2019年からは連続で下がっていることからも、ゲーム企業の設立数は減少傾向にあると言えそうです。

ゲーム業界企業数_設立年別_20220301

近年設立された企業が少ないからといって、新規参入が少ないわけではありません。他分野から既存企業も参入します。しかし企業は活動年数が長くなるほど生き延びる確率は下がります。90年代や2000年代はこのグラフよりも多くの企業が活動していたはず。ここ3年の減少が急であることは、国内ゲーム業界に参入する魅力が薄れていることを示します。

分類・集計方法と課題

今回、粗くなるのは承知の上でゲームに関わる企業をなるべく多く集めました。弊社の企業リストをベースに、日本標準産業分類におけるゲームソフトウェア業、ホームページでゲームに言及している企業、関連団体の参加企業を集計しています。次にそれらの企業をゲームストア、プレスリリースや各社のHP、SNSを参考に分野ごとに分類しました。

課題もあります。ひとつは手法の限界。調査票を送付し集計する方法ではないため、売上や利益の規模は把握できていません。海外市場で日本のパブリッシャーがどれほど稼いでいるのか。海外パブリッシャーの制作を日本企業がどれほど請け負っているのか。日本ゲーム産業の国際競争力を測ることはできていません。

もう一つは網羅した範囲。今回はパッケージソフトの流通に関わる卸や小売企業、アーケード店舗は十分に拾い上げることができませんでした。ゲームハードウェアの部品やマウスなど周辺機器を製造する企業も、カバー不足。特に店舗やVR施設に代表される空間はゲームが拡張されていく領域のひとつといってもよく、新分野に分類できます。ここは手法ではなく時間の制約が大きく、今後の課題です。

また今回は日本法人を対象としました。これはゲーム産業としてみるにはよいものの、消費地として日本ゲーム市場をみるには不十分。日本でタイトル展開しながらも国内法人がない海外パブリッシャーがあるからです。これらが今回の企業数には含まれない点にご注意ください。

パブリッシャー(と予備軍)の成長機会

リモコンやタッチディスプレイなど新しい入力方式で生み出された遊び。処理能力の向上や通信で可能になった遊び。SNSを前提とした遊び。ゲームビジネスの変化を引き起こすのはいつも「新しい遊び」です。

新しい遊びを生み出す力をもっとも備えているのは、ゲームパブリッシャーです。ただ内情は複雑。積極的な企業もあれば、続編ばかりで新しい遊びを生み出せていない企業もあります。新分野に取り組んでも、IPサービスと同じ位置付けで進めるところもあります。他のゲーム企業への支援や、制作の受託に回る例も。次のヒット作が生み出せず、成長戦略が描けていないようにみえる企業も少なくありません。

むしろ今はパブリッシャーではない企業が新しい遊びを生み出すかもしれません。ソーシャルゲームはSNSを提供する「メディア・コミュニティ」企業から広がりました。「新分野」はゲームと双方向であり、自らゲームを作る企業が出るでしょう。「ゲーム制作」企業もゲームをパブリッシュしたりクリエイターにツールを提供したりして、新しい遊びを作り出す可能性が十分にあります。AmazonやNetflixがゲームをパブリッシュする時代なのです。

これまで新しい遊びをリードしたのはハードウェア。今後もその役割は大きいでしょう。ただゲームは、観る・聴く・触れる・創る・会話するなどの楽しみ方がまだまだ未開拓。

パブリッシャーとその予備軍の成長機会は、大いにありそうです。

 

 

 

本記事で取り上げた会社名は敬称略とさせていただきました。ご了承ください。

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