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様々なハードウェアでゲームを楽しむ人を結びつけるクラウドゲーム。先日は、クラウドゲームにはスマホゲームと家庭用ゲームのユーザーを結びつけ、ゲーム市場を大きく変え成長させる可能性があると書きました。
じつはプレイヤー以外にも、ゲームには大切な存在がいます。それは、ゲームを観る人。プレイヤーの後ろで見て楽しんでくれる友だち家族や、eSportsやゲーム実況を見て、楽しむ方々です。
いまのゲーム実況映像の配信や視聴者とのやりとりは、映像配信サービスやSNSで行われています。ゲーム開発会社は、ゲームは素材として提供するものの、ゲームプレイ映像やコミュニケーションには、ほぼノータッチです。
ゲームストリーミングが普及すると、ゲームそのものをストリーミングで配信すると同時に、ゲーム映像も配信できるようになる。つまり、ゲームそのものの配信とプレイ映像の配信は、同じ事業者が同時に提供できるのです。
これを図にしてみます(手書きで恐れ入ります)。現状はゲームをプレイし、プレイヤーが映像をYoutubeやTwitchなどを経由して配信する仕組みです。
一方、ゲームをストリーミング配信と同時に、映像も配信できてしまうのが、ゲームストリーミングです。
私は今後、ゲームと同時にプレイ映像も配信する大手ゲーム会社と、プレイ映像はTwitchやYoutubeに任せるゲーム会社に分かれていくと考えています。前者ができる企業は限られます。しかし、これまで実空間やSNSでやりとりされてきた、ゲームにまつわるコミュニケーションを、ゲーム開発者が設計・運営できるようになる。
新たな体験とビジネスモデルが生まれる可能性を感じるのは私だけでしょうか。
ゲームそのものとプレイ映像の配信を同時に手がけると、視聴者にはプレイヤーとは異なる画面を、リアルタイムに用意できます。1人称の視点ではなく全体を見渡すアングルや、透視や暗視などプレイヤーには見えない情報、コメントなどコミュニケーションに特化した画面レイアウトなどが考えられます。
さらに、ゲームに合わせたコミュニケーションの場も柔軟に設計できます。『あつまれ どうぶつの森』であれば、島の感想や作り方をテキストや絵や音声でやりとりしてもいいですし、『FIFA』であれば、得点シーンを切り出した映像をもとに会話できるようにしてもいいかもしれません。
私自身は、ゲームとプレイ映像を同時配信する最大のポイントは、視聴者がゲームに何らかの形で参加できる点だと考えています。GoogleのStadiaには、配信中のスポーツゲームにそのまま待列に入って参加する、Crowd Playという機能があります。
(下記映像は、発表会の該当箇所から始まるよう切り出しています)
私はこのデモを観たとき、視聴者がゲームに直接作用できるようになる、と大いに刺激を受けました。このデモでは視聴者が実況者と同じ選手として参加しますが、ゲームによっては、もっと非対称で、プレイヤーとは別の角度から参加できるはずです。
スポーツゲームで選手を応援したり審判となったり採点したり。RPGで街キャラを演じたりアイテムを作ったり。パズルやアクションゲームのステージ設計をしたり。どれもおなじみの遊びですが、これらの多様な遊びを一つの場所で提供できるところに、ゲームストリーミングの価値があると思うのです。
ゲームそのものだけでなく、プレイ映像やその周辺のコミュニケーションまで直接手がけられるようになれば、ゲーム会社のビジネスモデルは大きく選択肢が増えます。
プロスポーツのように、プレイそのものにはお金が要らなくても、トップ選手の映像を見たり、指導を受けたりするところで収益を上げられるかもしれません。コミュニティが充実してくると、広告収益も考えられます。ゲーム開発会社が、SNSビジネスのようなビジネスモデルを展開する可能性すらあるのです。
逆に言えば、1つの入力方式(コントローラーやタッチスクリーンなど)に向けてゲームを作るだけでなく、プレイし観る人がどう関わり合うか、そこからどのように収益を上げていくか、をこれからのゲーム会社は考えなかければなりません。ソフトウェアだけでなくビジネスをも設計しなければならないのです。
まとめますと、先日の記事でとりあげた異なる端末を持つゲームユーザーを足し合わせる方向とは別に、ゲームストリーミングには視聴者を巻き込んだコミュニティサービスとして、市場を成長させる方向が考えられます。
参考記事:『ゲームストリーミングの可能性(1) ゲーム体験とゲーム市場の融合』
ゲームプレイ映像配信のツートップTwitchとYoutubeが、ゲームストリーミングならではの遊びやサービスをどのように開発するかは、わかりません。しかしゲームそのものの体験に加え、ユニークな視聴体験やコミュニケーションを上手に設計し、最適な収益モデルを適用できれば、ゲーム開発会社やSNS運営企業などにも、グローバルなビジネスチャンスがあるように思います。