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開始翌日に会員数1000万人を超えたDisney+。初年度7000万人超えの成長戦略を探ります。
2020年10月3日でのDisney+会員数は7370万人。開始11ヶ月で驚異的とも言えるスタートを切っています。
有料会員7000万人というと、5年前のNetflixと同規模。今のNetflixの会員数がほぼ2億人ですし、興行収入歴代1位の映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』も2億人近く劇場で観ている。この勢いが続けば、2億という数字は現実味がありそうです。
一方、気になるのは客単価です。
開始直後の$5.56から、2020年春には4ドル台へと下落。Netflixは一番低い地域(ラテンアメリカ)でも$8.21、アメリカは$12.57あるので、Disney+の客単価が低いのは間違いない。
理由のひとつは、基本プランの低さ。日本の場合Disney+は700円(税抜)でNetflixの800円を下まわります。敢えて低価格で攻めているので、今後は値上げのタイミングがポイントになりそうです。
もう一つは、上位プランがないこと。同時視聴数や高画質対応で値段をあげることを現時点ではやっていない。映画『ムーラン』を早く見れるプレミアアクセス(2,980円)など追加購入オプションはありますが、底支えするほどではなさそうです。
さらにDisney+はVerizonやNTTドコモなど、他社経由での販売が多い。必然的に、粗利益は低くなります。
実は、急成長に大きく寄与しているのが、インドです。
1億人近い月間アクティブユーザー(MAU)を持つHotstarを買収、2020年4月にDisney+ Hotstarとしてリニューアル。2020年第3四半期の会員数の15%、800万人以上がインドのお客さんです。
同時にインド市場は客単価の下落も引き起こしていて、インドを省くと客単価は4.62ドルから$5.31に上がるようです。
Given the unique nature of our India offering, it’s worth noting that Disney+ Hotstar comprised about 15% of our quarter-end subscribers. As it relates to ARPU, Disney+’s overall ARPU this quarter was $4.62; however, excluding Disney+ Hotstar, it was $5.31.
Source: Disney Q3 FY20 Earnings Conference Call
しばらく成長が続くとして、問題は長く利用してもらうこと。
Netflixの広告を自社媒体で扱わないなど、Disneyは明らかにNetflixを競合と位置付けている。Netflixと競うなら、今の映像の量やバリエーションでは、足りません。
日本のアニメを世界展開するNetflixのように、ローカル作品をDisneyが次々生み出したら面白い。『House of Cards』のような問題作や尖った作品も欲しい。けれど、現時点でその気配は感じられません。
王道で西洋的な作品に偏っても、劇場向けシリーズ作品だけでなく、新しいキャラクターとストーリーをどれだけ生み出せるか、が勝負になるのではないでしょうか。
しかし実は、Netflixと競合しない戦略もあります。
『映像ストリーミング』なら、Netflixと勝負せざるを得ない。けれど、映像やリアル店舗やテーマパーク、ゲームをつなげた『ブランド(IP)サービス』であれば、Netflixは真似できず、Disneyの強みも活きるはず。
スターウォーズの映像も、オンラインシューティングゲームも楽しめ、テーマパークや店舗で特典がもらる月額サービス。
トイストーリーやアナ雪の世界観やキャラが楽しめる、Robloxやマインクラフトのようなコミュニティと、映画や教育コンテンツが楽しめる月額サービス。
どうもDisneyを見ていると、競合がルールを決めたフィールドで、無理して闘っている気がしてならない。逆に言えば、ここに他のエンタテインメントブランドが成長する余地があるのかも、しれません。
The Walt Disney Company 『Disney+ Sees Extraordinary Consumer Demand with More Than 10 Million Sign-Ups』
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