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2019.07.18
ビジネスモデルの研究

複数事業の重ね合わせ。 Adobeサブスク売上のからくり

Adobe売上(構成比) 2009-2018

売上1兆円を目前にしたAdobe。デザイナーの必須ソフト、イラストレーターやフォトショップ、PDFなどを生み出した会社です。彼らはサブスクリプションビジネスの成功例とされ、今でもサブスクリプション売上が伸びています。

しかし近年、彼らのデザイナーソフト事業は見た目よりも停滞している可能性があります。

サブスクリプションで売上は倍に

Adobeは2012年、DVDやダウンロードによる商品販売をやめ、定額サービス(サブスクリプション)に移行しました。直後2013年は売上が8%もダウン。しかし翌年から回復し、2016年からは前年比20%増が続いています。

Adobe売上 2009-2018
出典:Adobe Financial Documents

サブスクリプション売上 8000億円規模に

Adobeは「サブスクリプション(青)」「プロダクト(赤)」「サービス(黄)」別に売上を公表しています。

Adobe売上(サブスクリプション/プロダクト別)
出典:Adobe Financial Documents

2018年サブスクリプションの売上は79億ドル(約8400億円)。最盛期のプロダクト売上34億ドル(約3600億円)の2倍を超えています。これだけを見ると、デザイナー向けソフト事業をサブスクリプションに移行して、売上が倍になった、と言えなくもありません。

3年でサブスクリプションが商品販売を上回る

売上構成を100分比でみます。すると、サブスクリプション売上がプロダクト16億ドルを初めて上回ったのは2014年頃だとわかります。

Adobe売上(構成比) 2009-2018
出典:Adobe Financial Documents

実は、Adobeのサブスクリプションは3つある

しかし、この『サブスクリプション売上』には、注意が必要です。

なぜなら、Adobeのサブスクリプションは主力のデザイナー向けCreative Cloud以外にも、PDF関連ソフト事業と企業向けソリューション事業、計3つもあるからです。Adobeが公表するサブスクリプション売上は、これら3事業すべて含みます。

つまり、Adobeのサブスクリプション売上だけを見て、フォトショップやイラストレーターなどデザイナー向けソフト事業が伸びていると判断はできません。特にMarketo社の買収など、ここ数年は法人向けソリューション事業の伸びが大きく、むしろデザイナー向けソフト事業は停滞している可能性があります。

Creative Cloud単体の売上をARRでみる

そこで、Adobeが決算時に時々に公表する、Creative CloudのARRをみます(ARRとは、『Annual Recurring Revenue』年間継続収益を差し、正確にデザイナー向けソフト事業のサブスク売上高がわかります)。

2014年11月期末、Creative Cloud単体のARRは16億ドル。
出典:Adobe Q4 and FY2014 Earnings Release 

2015年11月期末、Creative Cloud単体のARRは26億ドル(約2700億円)。少なくともこの時点で、デザイナー向けソフト事業が3000億円弱あることがわかります。ちなみに全サブスクリプション売上の8割をCreative Cloudが占めています。
出典:Adobe Q4 and FY2015 Earnings Release

ところが2015年以降、Adobeは2000億円規模の買収など法人ソリューション事業を拡大。買収した企業が法人向けに『サブスクリプション』サービスをすでに提供しているため、Adobeのサブスクリプションは必然的に拡大します。今のサブスクリプション売上高は8000億円近くありますが、Creative Cloudがどれほどを占めているのかは、わかりません。

Adobeは2015年から、サブスクリプション会員数も公表しなくなりました。

サブスクリプションへの移行だけが、成長要因ではない

ここからは推測ですが、おそらくCreative Cloud事業は全社売上ほど伸びておらず、単体では4000億円ほどではないかと考えています。

Adobeはサブスクリプションビジネスの成功例とされます。PhotoshopやIllustratorをパッケージで販売していたころよりも、事業規模が2倍以上に増えたのは、間違いありません。しかし、2015年以降の売上の伸びは、どちらかというと、法人ビジネスのサブスクリプション売上を重ね合わせて、みせているのではないか。

Adobeはデザイナー向けソフト事業で1兆円に到達しそうに見えますが、内情はそこまでシンプルではない。少なくとも、3000億円規模の商品販売ビジネスを、サブスクリプションサービスに移行したら売上が1兆円に急拡大した、という単純な話ではなさそうです。

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